フィジカル


今日は、前々回コメント欄の、k-taro の質問に答えます。
端的に言うと、オリビア・ニュートン・ジョンの『フィジカル』を和訳せよ、とのご用命(笑)。
♪Let's get physical, physical. I wanna get physical. Let's get into physical〜 っていう、あれですな。


まずは教科書的な解説から。
physical というのは、要するに mental の対立概念です。
mental は、「心の」とか「精神の」とか、そういう実体のないモノの領域を表す語ですから、その反対の physical は、「身体の」「肉体の」「物質界の」等々、実在するモノ的領域を表す語ということになります。
物理学は physics ですな。


で、k-taro は勘違いしているようだが、get + 形容詞 は、「〜になる」という「動作」を表す表現です。
ちなみに、be + 形容詞 が、「〜である」という「状態」を表す表現。
例えば、It's dark. は「暗い」という「状態」を表しているけれども、It gets dark. となると、「暗くなる」という「動作」を表します。


さて、そうすると、くだんのオリビア・ニュートン・ジョンの、get physical というのは、つまりは、「physical になる」という動作を表しているわけです。


しかし、その意味合いが微妙。
調べてみると、get physical は、「健康診断を受ける」とか「怒る、キレる」という意味でも使うようだが、これはさすがに違うだろう(笑)。


いや、て言うか、オリビア・ニュートン・ジョン『フィジカル』の詞なんて、さすがにあのサビの、♪Let's get physical, physical. I wanna get physical. Let's get into physical〜 ってとこしか知らなかったし、確かあの曲のPVって、ほんとにレオタードか何か着てオリビア嬢が延々踊ってるような映像だったから、健康診断じゃないけど、それこそ、健康的に行きましょう!みたいな意味かと思ってました、実は。


しかーし。
この度、k-taro のリクエストを受けて、ネットで詞を拾ってみたら、あらあらびっくり。
えらいことオトナな感じの詞でありました、これは(笑)。
あのサビの前に、こんな前段がありましたです。


I'm saying all the things that I know you'll like,
Makin' good conversation
I gotta handle you just right,
You know what I mean
I took you to an intimate restaurant,
Then to a suggestive movie
There's nothin' left to talk about,
Unless it's horizontally


(大意)
あなたの気に入りそうな話ばかりして盛り上げて
気分よくさせて
いい感じのレストランに連れてって
その気にさせるような映画を観て
そうすりゃもう話すことは何もなくなる
(最後の、Unless it's horizontally っていうのがいまいちピンとこないんだけど、どういう意味? 「うまく徐々に盛り上げていけば」とか、そういうこと? → ショーエ)


……と、まあだいたいそのようなことなわけです。
そうすると、サビの解釈は、どう考えても、


Let's get physical, physical,
(そんじゃあぼちぼちカラダを使いましょうか)
I wanna get physical, let's get into physical
(カラダを使いたいのよ、カラダ動かしましょうよ)
Let me hear your body talk,
Your body talk, let me hear your body talk
(あなたのカラダの声を聞きたいのよ)


……放送禁止にしてもらいたいですな(笑)。
2コーラス目はさらにヒートアップ。


I've been patient, I've been good,
Tried to keep my hands on the table
It's gettin' hard this holdin' back,
You know what I mean
I'm sure you'll understand my point of view,
We know each other mentally
You gotta know that you're bringin' out
The animal in me


(大意)
がまんしていい子にしてたけど
だんだん抑えられなくなってきた
私の言いたいことはわかるでしょ
たがいの気持ちはもう十分わかったはず
あなたは私の中のケモノ(the animal in me!)を呼び起こしてるのよ


……うーむ。
まさに洋モノのアダルトビデオでも観ているような、身もフタもなさと言うか……。


たぶん、日常的な文脈では、「Let's get physical」は、普通に「健康的に身体を動かしましょう」くらいのニュアンスではないかと思います。
だから、要するにこの曲は、そういう表現を敢えてこういうオトナな文脈の中に放り込んで、そんで、ご丁寧にビデオもフィットネス風の映像にして、ダブルミーニング的なウィットを出そうとした、と。
そういう意図でもって作られた曲だったんだということが、k-taro の質問をきっかけにして、判明しました。
あのプロモーションビデオはいかにも唐突で、いったいなんじゃこりゃと日本人は誰もが思ってたと思うけど、謎がとけました。
あの映像でカモフラージュしながら、R指定級のオトナの歌を歌ってたんだな(笑)。
ありがとう、k-taro(笑)。


いかん、ドイツvsアルゼンチンだ。
観戦に入ります!