ワールドカップ(2)


先週まで、南洋の某ODA対象国の子ども達の日本ツアーを案内していたのだけれども、その中のイベントの1つとして、日本の子ども達とのバスケットボールの交流試合というのをやった。
某国ではバスケットボールが一般的で、かつての日本の男の子が誰でも野球をしたように、みんながバスケットボールをやるらしい。
ただし、コートは屋外。もちろん。
年齢は中学生くらいなので、日本側も、中学校のチームを用意した。


単なる親善試合のつもりだったのだけれども、日本チームは、県下で3本の指に入るという強豪チームが来てしまった。
某国の方は、別に普段はバスケとは何の関係もない、一般の生徒たちだ。


試合前、コートを半分ずつ使ってアップをするのだけれども、日本チームは、整然とスクエアパスをしたり、3対2の練習をしたりと、見るからに上手。
一方、某国はみんながてんでバラバラにシュート練習をしてるだけ。当たり前だけど。
中には、バスケやることをすっかり忘れてたらしく、サンダルで来ちゃって、やむなく裸足でやってる子もいる。
このマッチメイクは某国の子にはちょっとかわいそうだ、と正直思った。


ところが、フタを開けてみると、周囲の誰もの予想を裏切り、某国チームが勝ってしまった。
2試合やって、2試合とも勝った。
2回目は日本チームの監督もかなり意地になってて、明らかに主戦級を投入してきたが、それでも勝った。


細かいパス回しとかストラテジー的な部分では、日本チームの技術が確実に上回っている。
でも、誰もが見てまず感じるのは、身体能力の圧倒的な差だ。
走る、跳ぶ、投げるといった基礎的な体力において、某国チームは日本チームを軽く凌駕している。
日本の子どもの体力は、統計どおりに、確実に落ちていると思う。


そして、何より勝敗を分けていると思われたのは、ボールに対する執着心の違いだ。
目つきが違う、ボールへの食らいつき方が違う。
直接の勝因は、ほとんどのリバウンドを某国チームが取っていたことだと思うが、それは跳躍力の差もさることながら、ボールへの執着の違いが大きいように思った。
だから、プレーも荒っぽい。
審判がもっと厳しくファールを取れば、結果は違ったかもしれない。
でも、某国チームの子ども達のプレーの方が、見ていて断然おもしろい。


以上が長い前フリなんですけれども、要するに、これと全く同じことを、ワールドカップを見ていても思った。
日本チームに欠けているのは、ボールへの執着心ではないかと思う。
個人技がまだまだだとか、身体能力の差が大きいとか、いろいろ言われるけれども、世界はそもそもボールを追うときの目つきが違う。
やはりサッカーは狩猟民族の競技なのか。
それとも、日本人はやはり上品に育ちすぎているのか。
中南米やアフリカは言うに及ばず、ヨーロッパ勢を見ていても、ボールに向かう勢いが全然違うと思うんだけど、どうでしょうか。
で、だとしたら、この差を埋めるのは、なかなか簡単な話ではないでしょうな、たぶん。


だから、日本が細かいパス回しとかで世界に対抗しようとする戦略は恐らく正解で、身体的にも、モチベーションの面でも劣るとなれば、まともに向かっていっては勝ち目がない。
なんか、忍者的と言うか古武術的と言うか(笑)、そういう日本的なサッカーを編み出すしかないんじゃないかという気がします。いや、素人ですけど、ぼく、サッカーは。



話は逸れるけれども、サッカー報道では何故かよく「日本はフィジカルの強さが……」というような言い方をしていて、あれが気になる。
言ってる意味はわかるけど、physical は形容詞ですぜ……。
何故かサッカー批評だけでよく用いられる語法のようで、どういういきさつであのような言い方が一般化したのか、はなはだ疑問に思いますです。