パラオ(出張)紀行(3)

パラオの新首都



もう飽きてると思いますが、始めた行きがかり上、完結しときます。
3日目。


7時起床。ホテルでバイキングの朝食。昨日と同じ。
8時半にボスとロビーで待ち合わせ。
今日の用務先1は、ホテルから歩いて10分ほどの場所だけれども、朝からあいにくの雨。
そう言えば、夜中にも、雨の音で一度目が覚めた。


パラオの2月は本来乾期で、それ故にダイビングにもベストシーズンとされる。
この時期、たくさんのダイバーがやって来る。
しかし、現実には、近年、この時期にも雨が多くなっているらしい。
昨日のランチの時に「相当偉い人」が言うことには、「地球温暖化の影響」とのこと。
よく理屈はわからないけれども、島嶼国だけに、パラオ人にとって温暖化の問題は深刻で、水位の上昇なんかにも敏感だ。
小島ひとつが沈没しかねない。


とにかくそういうわけで、雨なんだけど傘もないし、やむを得ずタクシーを呼ぶ。
9時、用務先1。
現地に駐在している日本人に、パラオの概況を聞く。主に、パラオの構造的な問題や、行政システムの不備などについて。
10時、またタクシーで移動して、用務先2。
ここも現地駐在の日本人。我々と同郷であるとのことで、地元の世間話が半分、パラオの政争等についての話が半分。
11時、パラオ到着時に空港まで迎えに来てくれたシニア・ボランティア・スタッフのXさんが、用務先2まで車で迎えに来てくれて、PRRのレストランに移動。
パラオの「割と偉い人」とそのスタッフ2名、及びXさんとランチ。
昨日、「相当偉い人」に連れてきてもらったのと同じレストランだけども、やむを得まい。
メニューも昨日とはやや違ってるし。
ただメシだし。
用件は、基本的にパラオ入りする前に既にまとまっていたものなので、資料の手渡しをした以外は、ほぼ歓談に終始する。


パラオ人の嗜好品に、ビートルナッツ(日本名、ビンロウジュ?)というのがある。
ビワくらいの大きさの青い実で、これをナイフで半分に切り、切り口に石灰の粉を振りかけて、葉っぱに巻いて、口の中でくちゃくちゃと噛む。
中の種を噛み砕くと強烈な刺激が発生し、覚醒作用があるらしい。
会議中なんかでも、パラオ人はこれをくちゃくちゃ噛み、横に空き缶とかを置いて、その中にペッと吐き出すそうだ。
巻いてる葉っぱも、何かと思ったら、どうもタバコらしい。もちろんナマのまま。


ランチ後、「割と偉い人」が、持っていたポーチの中からこのビートルナッツを取り出したので、隣で「ほほう、これが……」と好奇心100%でしげしげと観察する。
スパッとナイフで半分に切り、そこにてんこ盛りに石灰の粉を置く。聞いてみると、原料は貝殻とか珊瑚とからしい。それを、タバコの葉で巻く。
そして、まるごと口に放り込み、ばりぼりと噛み砕いている。
うーむ。身体に悪そうだ。
ビートルナッツもともかくとして、石灰ってどうなのかね。カルシウムとかは豊富そうな気もするが。
それに、タバコの葉を直接噛んでるんだから、これはやっぱりよくないだろう。
でも、ちょっとやってみたい。


相手が「割と偉い人」なので、「1個くんない?」とも言えず、黙って見ていたけれども、雑貨屋とかで普通に売ってるらしい。
いや、「割と偉い人」、ビニール袋にも入れずに、ポーチの中に直接葉っぱやらビートルナッツやらをごろごろ入れてたから、たとえもらってもあれをくちゃくちゃ噛むのはちょっと気が引ける。
て言うか、そこいら中で栽培してるらしい。ビートルナッツ。
パラオ人は、5歳くらいから、石灰とタバコはなしで嗜むらしい。
仕事終わったら、雑貨屋に行って買ってみようと思ってたんだけども、夜になったら忘れてた。
次回の課題としたい。


「割と偉い人」との昼食後、次の用務まで中途半端に時間があるので、どうしようかと思っていたら、Xさんが、車で近辺を案内してくれるとおっしゃるので、お言葉に甘える。
「ミューンス・スコウジョウ」という場所へ。
日本軍が作った飛行場で、「飛行場」がなまって「スコウジョウ」と呼ばれている。
続いて海軍墓地へ。
これは名前のとおり、日本兵の慰霊碑などがあるところ。ボスのリクエストで連れて行ってもらった。
その後、日本の資金で作ったという、KBブリッジ(コロール島バベルダオブ島を結ぶ橋)へ。
あいにくの雨だけれども、海をのぞくと、陸からでもエンゼルフィッシュなんかがうようよ見える。イワシの群れも見えた。


2時。パラオ高校を訪問。
日本の高校生との交流行事があるとのことで、ちょっと見学させてもらう。
スポーツ交流だけれども、パラオの高校生は、さすがに日本の高校生と比べると身体能力が格段に高い。
て言うか、日本の子どもの体力の低下は、結構深刻なレベルに来ていると思うんだけど、どうでしょう。


3時。いったんホテルに戻る。
昨日、「相当偉い人」に誘われた新首都の視察へ。
ホテルまで「相当偉い人」が車で迎えに来てくれた。
地元の新聞記者も同乗している。


パラオの現在の行政機関は、主にアラカベサン島に集中しているけれども、そのほとんどは、トタン屋根の小さい建物だ。
大統領府も普通の一軒家みたいだし、外務局とか言っても、物置小屋くらいにしか見えない。
そうした「首都機能」を、バベルダオブ島に移転するという計画が進行中で、建物は既に完成し、あとはインフラの整備を待つのみだと言う。


コロール島からKBブリッジを渡り、バベルダオブ島に入って空港を越えると、しばらく舗装のない悪路に入る。
と言うよりも、ほとんどオフロード。
「相当偉い人」の車は4駆のオフローダーなのでさほど問題なかった
けれども、穴ぼこだらけの道が延々続く。
右も左も、ほとんど手つかずのジャングル。
この景観に心を奪われ、窓に張り付いて外を眺め続ける。


進むこと1時間。
突然、ジャングルの丘の頂上に、ここはワシントンDCかと突っ込みたくなるような、ホワイトハウスまがいの建築物が出現する。
新首都だ。
やはりアメリカの出資で、アメリカ人がデザインしているらしい。
今のトタン屋根とは比較にならないほどの、どえらいものが既にできあがっている。


「相当偉い人」の後を付いて、大統領オフィス、議会棟などをひととおり見学。
ギリシア風のぶっとい柱は、しかし表面がプラスチック製らしく、グーで叩いてみると張りぼてであることがわかった。
それにしても立派。
首都機能を移転する目的は、このバベルダオブ島の開発らしい。
ほとんど未開の状態に近いこの島に首都を持ってくることで、コロールへの人口集中を緩和したり、この島での農業開発などを期待しているとのこと。


また1時間かけて、コロール島に戻る。
今年の秋頃には新首都への移転が始まるらしく、その頃までには、道路も全て整備される。
開発される前に、この島をひととおり回っておきたいと思った。


6時前、ホテルで降ろしてもらう。
任務、これにて全て終了。
しかし、今夜遅くにはもう出発だ。


すぐに着替えて外に出て、近くのスーパーでお土産をまとめて買う。
現地シニア・ボランティアのXさん、Yさんに夕食に招待されたので、7時にボスといっしょにホテル近辺の指定されたレストランへ。
初日、ぼくが到着直後に入ったのと同じレストランだ(笑)。
Yさんはオーナーとも顔見知りで、挨拶に来てくれたのだけれども、沖縄出身の日本人らしく、沖縄の方言がきつすぎて、ほとんど何も理解できなかった。


9時過ぎまで、ビールをがんがん飲んで雑談。
定年退職後に、こうやって暖かいところでぼちぼち仕事しながらのんびり過ごすのも、確かにいいかもしれないと思う。
Xさんはもと会社経営者で、歳はいっているけれども、まだ小学生のお子さんがいる。
子どもはもちろんパラオの小学校に通っている。
教育の水準は高くないけれども、パラオの小学校は、1人1人にきちんと目の行き届いた、血の通った教育なので満足している、ということだった。
2〜3年の滞在予定らしいので、それくらいなら、確かに教育水準がどうのこうのなんて小学校なら大した問題じゃないだろうし、それよりも子ども自身にとっても、得るものは大きいかもしれない。


ホテルに戻って、入浴、荷物の整理。
深夜0時にチェックアウト。
パラオ滞在終了。


2時半のフライトでグアムへ。
パラオは、着くときも発つときも夜の便しかないので、飛行機で上空からの景色を見られないのが残念。


乗り継いで、セントレアに着いたのが午前10時半。
家に着いたら、家族と外で昼食。
ビール1本飲んだら急に眠くなり、家に戻って、2時にこたつで寝る。
そのまま、途中に一度起きて夕食を食べたのと、娘に乗っかられて絵本を2〜3冊読まされた以外は、翌朝9時まで、ひたすら寝る。
19時間、か。
こんなに寝たの、学生時代以来かも。
学生の時は、一度、30時間くらい寝たことがあるけれども、そういう話はまた別の機会に。
以上、パラオ紀行でした。
次は10月頃に行くことになるかもしれません。