RCサクセション研究室その1


まず前言撤回。
「グレイトフル・デイズ1981-90」のリマスタリングは、やはり全面的にグー。その後聴き直してたら、どんどん印象よくなりました。1曲目「どかどか……」も、いい。ドンシャリだけど、いい。
拙宅のヘッドフォン用のCDプレーヤーはPCのすぐ近くに設置してあって、普段CDPとPCが同時に稼働することはないんだけど、前回はブログ書きながら聴いてたから、同時稼働。もしかすると、そのせいで何らかの干渉があったのかもしれません。PCの電磁波とか、何か。
て言うか、けしからんことにRCのオリジナルアルバムは現在ほとんどが入手困難な状態になってて、持ってるのは昔のプレスばっかりだから、CDは総じてみんな音がダメダメ。現在の技術でマスタリングしたっていうだけで、十分意味がある。


で、問題の(個人的には大事件の)初CD化「マリコ」。


RCがいちばん作品的に充実してたのは、なんつっても84年「FEEL SO BAD」と85年「HEART ACE」の2枚だ。一般的な評価とはかなり違ってるかもしれないけど、とにかくそうだ。この辺までのRCは、ずーっと上り坂。
次の「MARVY」になると、清志郎のソロをはさんだりもしたせいか、もうずいぶん作風が変わってしまっていて、個人的にはぐっとこなくなってしまっていた。「COVERS」は、方法としてはおもしろかったけれども、あまりに突貫工事の録音で、演奏もまずい。最後の「BABY A GOGO」に至っては、もうG2も新井田さんもいないわけで、これはもはやRCではない。曲はいいんだけど、この2人なしではもはやRCの音が出ないということがよくわかった哀しいアルバムだった。


マリコ」は、その(個人的には)ピーク期の「HEART ACE」の次に出されたマキシシングル「NAUGHTY BOY」のB面だった。だから、まだまだピーク。


この辺がピークっちゅうのは、要するに、(たぶん)まだきっちり時間をかけてアレンジして、(たぶん)ちゃんといろいろサウンドのコンセプトなんかも考えて録音してるんですな。ちゃんと丁寧に作ってる。
それはやっぱすごく大事なのだ。


また機会を改めて書きたいとは思うんだけども、RCにおけるG2の功績というのは実はすごく大きくて、RCのサウンドに独特の色気というか、単なる無骨で無粋なR&B〜R&Rのバンドではない華やかさがあるのは、G2の変態キーボードアレンジによるところが大きい。
その辺のアレンジ〜サウンド・プロダクションにかけての作業がいちばん充実してたのが、上記2枚のあたりだと思う。
しかも、それがぼくの高校時代とぴったり重なります。


さらに言うと、清志郎が曲作りにいちばん手をかけていたのは、いわゆる暗黒時代、70年代半ば頃だと思われる。仕事干されたりなんかして、ヒマでヒマで、音楽教室に通ったりなんかもしてた(笑)という時期。
シングルマン」を聴けばわかるけれども、この頃の曲は、コードも手が混んでて、手間暇かけて作ったけったいな曲が多い。
「COVERS」以降の清志郎は、良くも悪くも、曲を作り込まなくなってしまって、それこそ1日に3曲とか、そういう量産の喜びと言うか、ぽんぽん作ってぽんぽん出す、みたいな方向へ行ってしまった。インタビューを読むと、意図的なものであったことはわかるけれども、聴く方としては、やはり作り込んだ曲の方がよい。


で、その暗黒時代の手の混んだ曲作りと、ピーク期の優秀なサウンドが重なる作品というのがあるのだ。
RCは、なんつってもキャリアが長いから、曲のストックも膨大にある。人気が爆発した80年代以降も、レコード化されてなかった昔のレパートリーをお蔵出しして新録音にする、というケースは多々あった。
「FEEL SO BAD」における『私立探偵』『夢を見た』『胸ヤケ』といったあたりはいずれもフォーク時代の作品だけれども、この時期に録音されたことによって、実に素晴らしいものになっている。
「HEART ACE」の『山のふもとで犬と暮らしている』(注)などは、個人的にはRCのベストトラック3位以内に入ると思っている。


(注)RCには珍しいメジャー7th系。構成も複雑で、転調あり変拍子ありの異色作。大サビ(?)の「心配事は〜」のところなんて、B♭-A♭-Dm-E の4小節パターンが、次はA-G-D♭m-E♭、その次はA♭-G♭-Cm-D と、半音ずつ下へ転調してつながって、最後は元のCmaj7へ解決するっちゅう手の込みようで、なおかつ詞もメロも素晴らしい。こういうことも出来る(出来た?)のだ、清志郎は。


そういうわけで、『マリコ』は、暗黒時代の手の込んだレパートリーで、なおかつ、サウンド的にもピーク期の録音であるという貴重な作品でありながら、いまだにCD化されてなかった問題の曲だったのだ。
どうせならついでに、いっしょに収録されていた『サマーロマンス』もやってほしかった(これはなんと4ビートの曲)。
この「NAUGHTY BOY」というマキシシングル(ミニアルバムか?)は、表題曲がいまいちピンと来ない感じだったから、当時、レコードも何となく買わないまま入手しそびれてしまっていて、レコード会社が配布するサンプルのカセットしか持ってなかったんです。で、そのカセットを延々利用し続けてきただけに、余計気になってたわけです。


ともあれ、生きてるうちにこれがCD化されて、心のひっかかりがひとつとれました。
よかったよかった。