学力低下


OECDの学習到達度調査で日本の成績がえらいこと悪くなったというのが、センセーショナルに報道されている。前々から問題視されていた学力低下の問題が、いよいよシャレにならないレベルまで来ているということが、世界との比較でも数値的にはっきり示されたからだろう。


ちょっと考えただけでも思いあたることはいろいろあるし、その原因は複合的なモノであって、一概に何が悪いとは言い難いけれども、原因の一つに例の新学習指導要領があるということは、とりあえず言えると思う。
調査の対象になったのは、高校1年生で、これは、新学習指導要領の2期生。つまり、今の高2からが新カリキュラムの生徒だけれども、このあたりから確かに生徒の質が変化していることは、微かだけれども確実に感じる。
ただ、一方で、そんなカリキュラムやら教科書やらを多少変えたくらいで生徒の質がコロコロ変わるほど生徒は学校を当てにしていない、ということも同時に言えると思う。メディア上で見られる議論に確実に欠落しているのはこの視点であって、少なくとも中学生や高校生ともなれば、学校や教師なんていうのは、それほど影響力を持った存在ではなくなるはずだ。教師の言うことを100%真に受けてその指導に全力で取り組もうとする生徒、なんて100人に1人もいるんだろうか?
新カリキュラムが一定レベルまでは生徒の学力に影響を与えているのも事実だと思うけれども、それじゃあ学力低下がカリキュラムを是正すれば解決する問題かと言うと、そんな小手先の技術でどうにか出来るほど単純な問題ではないとも言えると思う。


中山文部科学相の発言がふるっている。
「一言でいうと勉強しなくなったということだ」
って、お前が言うな、ってほっぺたつねってやりたくなるな。勉強しなくていいようなカリキュラム作ったのは誰だ。
論述能力の弱さの原因は、「授業の中で自分の意見を述べさせることが少なかったこと」だそうだ。
当人の意見か官僚が作ったコメントかは知らないけれども、現場を知らずにカリキュラムをいぢくっている人々の発想はやはりこの程度なのかと溜息が出る。
今の中高生は、昔の世代に比べると、圧倒的に自分の意見を述べさせられる機会が多い。そういうスタイルの授業が増えてきている。また、照れや遠慮はどんどんなくなっているから、授業中も自由に発言する雰囲気が強い。
授業の中でもっと自分の意見を述べさせる機会を増やせば、論述能力が高まる? そんなバカな。我々の世代なんて、「授業の中で自分の意見を述べさせ」られる機会なんて、皆無に等しかったじゃん。問題は、明らかにそれ以前のレベルにある。
「歯止めをかけるために全国学力テストをやって、競い合う教育をしないといけない」
ま、教師や教育委員会は競争心をあおられるかもしれませんけどね……。