『ぐれる!』中島義道

『ぐれる!』中島義道新潮新書)を読む。
何気なく手にとって、そのまま何となく最後まで読んでしまった。ちょっとタイトルはセンスなくていやだ。せめて「!」は取ればよかったのに。


人間は誰でもどうせそのうち死ぬ。地球だって結局はいつか滅びる。人生は不平等で、偶然に翻弄される……。そういったニヒリズムから目をそらさず、世間の善良で前向きな価値観から降りて、かと言って社会的に抹殺されてしまうようなところまでは踏みはずさず、中途半端で居心地の悪い場所に敢えて踏みとどまり続ける。それが筆者の言う「ぐれる」である。
1冊かけて書かれているのはそれだけなんだけれども、すらすらと最後まで面白く読めるのは、文章が非常に上手だからだろう。極めて平易な言葉遣いだけれども、内容はさほど単純ではない。こういうことができるのは、相当頭のいい人に違いない。
中島義道という人は前からちょっと気になっていたけれども、読んだのはこれが初めて。もうちょっと別の著書をまず読むべきだったか。


いつも前向きでやたらと元気でやる気に満ちたサラリーマン、みたいな人種が嫌いだ。もちろん、やたらとやる気のある公務員、でも同じ。オレはこんなにバリバリやってんのになんでお前はもっと頑張らないんだ、と言わんばかりのタイプが同僚にもいるけれども、なるべく口をきかないようにしている。そういうタイプは、十割がバカだ。
人間は誰でもどうせいつか死ぬ。まず前提に絶望がある。それを忘れたふりして、そこから目を背けて生きるのはウソだ。その無神経さが癪に障るのかもしれない。
かったるいけどまあしょうがねえか、っていうスタンスでみんなが生きてれば、たぶん戦争も起こらないだろう。中島義道の言う「ぐれる」よりはもう少しだけ元気な感じで、どうせ死ぬんだけど、かったるいんだけど、それでもまあいちおうはがんばるよっていう、ニヒリズムをロマンチシズムで解消(?)してみせるような、そういう佇まいが、今のところはいいのではないかと思っている。