孔子暗黒伝


諸星大二郎孔子暗黒伝』を読む。集英社文庫版で読んだので目がチカチカしたが、そのとんでもなさに驚嘆。

今まで諸星大二郎は、短編とかを断片的に読んだくらいだった。それで判断してしまってた。いやあ、まずこれを読まなきゃいけなかったんだな。

山崎浩一が解説で書いているとおり、このマンガが、27年前、ジャンプで連載されてたっていう事実がまたすごい。意味わかったのかな、当時の子どもたち。その当時は、チャンピオンを読んでたな。「ドカベン」とか「ガキでか」とか「マカロニほうれん荘」とかの頃だ。ジャンプはまだ「アストロ球団」とかが続いてる時代か?

孔子老子からインド哲学、日本の神話、東南アジアやポリネシア民俗学文化人類学にも明るいと思われ、それらが全部ぐちゃぐちゃに混じり合って、最後にはビッグバン理論まで登場する壮大な物語に力技でまとめあげていく。ビッグバンなんて、当時、一般人は誰も知らなかったんじゃないの? ビッグバンに関する一般書が出たのってせいぜい80年代か、ヘタすりゃ90年代?
しかも、これを描いたとき、諸星大二郎は弱冠28歳。天才だ。
『おともだち』を26歳で描いた高野文子の次にすごい。いや、おんなじくらいすごい。

どうひっくり返っても、何度生まれ変わっても、絶対に自分にはこんなことはできないんじゃないか。そう思わせてしまう人を「天才」と呼ぶ。そういう人には嫉妬を感じない。ただただ敬服・敬愛するしかない。
ちょっと作風や傾向は好みではないんだけれども、諸星大二郎が天才だということはよーくわかった。