「3」来訪


睡眠力、という言葉がある。いや、ない。ぼくが作った。今では、ぼくの身辺では定着している。


世の中には、一定の時刻になれば、横になった途端に深い眠りにつき、どんなに劣悪な睡眠環境であろうとも余程のことがない限り目覚めることがなく、一定時間眠り続ければ、朝になると急にスイッチが入ったかのように実にすっきりと目を覚ます、といったような種類の人間がいる。こういう人を、睡眠力が強い、と言う。
逆に、いかに体が疲れていようともすぐには寝付けず、環境が少しでも変化しようものならろくに眠れず、眠れたとしても何度も目を覚まして、朝を迎えても決して睡眠の充実感を得られることがない、という人々もいる。こういう人を、睡眠力が弱い、と言う。
ちなみにぼくは、非常に睡眠力が弱い。


今まで出逢った人間の中で、図抜けた睡眠力の強さを持つのが、「3」(仮名)である。強いにも程がある。病的に強い。
「3」の睡眠力にまつわるエピソードは枚挙にいとまがないけれども、始めると長くなるので、やめときます。


で、今日は「3」が来訪。
年に3回くらいは来る。
来るたびに、「今日は泊まらずに帰る」と言うけれども、その日のうちに帰ったためしがない。
前回は大晦日にやって来て、結局うちで年越しした。


今日は午後、ずいぶん早い時間に来たので、うちの子ども達の相手に付き合わせた後、夕方5時前から飲み始めた。
最初からワインをがんがんいっちゃったら、まだ空が明るいうちから「3」が寝そうになってきたので、さすがにそれは早すぎるだろうということで頑張らせたところ、いったんは完全に正気に戻ったけれども、それでも9時台には寝てしまった。
一度眠ってしまったら、もはやどうすることも出来ない。その代わり、朝は実にすっきり起きて、知らないうちに夜の食い散らかしがきれいに片づけられていたりする。


現在、午前1時半。「3」は居間で爆睡中。うちの子どものアンパンマンのシーツをあてがってやったら、寝ながら「ありがとう」と言った。
子どもたちは、休日でも下手すりゃ朝6時とかに起き出すけれども、明朝は「3」がいるから安心です。