携帯を買う


ついに携帯電話を買ってしまった。


今までは特に必要がなかったから買わなかっただけなのだけれども、これほどまでに誰もが持つようになると、だんだん持っていないという事実に変なプライドのようなものを感じるようになってきて、できればこのまま一生持たずに過ごしてやろうとさえ思っていた。
近頃は、連絡先などを尋ねるときに、当たり前のように携帯の番号を聞かれることがあるけれども、そういう場合に「ぼく持ってないんです」と答えるのが、徐々に快感になりつつあった。そう答えた場合の相手の反応には2種類あって、1つは、へぇーと露骨に驚いてくれるパターン。これは気分がいい。プライドが助長される。もう1つは、「え? 何それ?」という顔をされるパターン。これは気まずい。感じ悪い。携帯のない生活など考えられない、とでも思っているに違いない。


そもそも、どこにいても電話がかかってくるというのは、非常によろしくない。あんなちまちましたモノでメールの返事などを書いたりするのも、めんどくさそうだ。
自分の家族や友だちなんかが持ってくれるのは便利でいいけれども、自分が持つのはちょっといかがなものか。
周りの人はみんな持ってるけど自分は持ってない、というのが理想だろう。


でも、買ってみたら、意外と嬉しかった。
嫁がauなので、auの家族割で申し込んだところ、割り当てられた電話番号は、上4桁が嫁の番号と全く同じ。これは家族だからなのか?と質問したら、そうではなくてものすごい偶然らしく、ショップのおねいちゃんが「すごーい」と目を丸くしていた。下4桁は、キャンペーン中とかで、無料で好きな数字を選ばせてくれたので、上と合わせてやたらと覚えやすい番号になって満足した。
しかしすごいな、最近の携帯って。何でもできるな。


ちなみに今どきの高校生なんかにとっては、「携帯」っていう言葉は「携帯電話」のことでしかなく、本来の意味を知らない奴がいたりする。それも、かなりの頻度でいると思われる。
だから、「貴重品を携帯する」とか言っても通じないし、「携帯用枕」とか言ったら、携帯電話の下に敷くクッションか何かだと思ってる可能性が高い。
その代わり、携帯電話の複雑な機能を隅々まで理解して完璧に使いこなしているし、絵文字、顔文字、ギャル文字等を恐るべき速度で入力することが出来る。