学校週休2日制と総合的な学習の時間(4)


ちょっと間が空きましたが、前のつづきです。


週休2日制の完全実施で、学校現場では、「ゆとり教育」どころか、どんどんゆとりがなくなっている、ということは前にも書いた。教員にとっては、1日の労働量が1.2倍、それにプラスして土曜のエクストラワークで、たいへんな負担増、という話。
じゃあ、生徒にとってはどうかというと、やはりそれと同様に、日常がきつくなっている。


標準的な時間割として、以前は、月〜金が6限授業、土曜が4限授業で、週に34時間。その土曜がなくなるわけだから、週あたりの授業数は30時間になる。つまり10%以上の減。
それで学習内容が同じように10%以上減っているのなら、確かに「ゆとり」が出るかもしれない。しかし現実は全く逆で、高校での3年間に課せられるノルマは、むしろ増えている。
しばらく前にも書いたけれども、ここ数年で、中学校での学習内容は極端に軽いものになったが、肝心の大学入試の方は何も変わっていない。つまり、中学まで楽した分のツケが、高校にまわされているだけだ。
いや、大学入試の問題のレベルは、10年、20年前に比べれば、かなり易しくなってはいる。今年のセンター試験の問題、英語は解いたけど、アホみたいに簡単に満点取れた。5年前でもこんなことはなかった。国公立の2次試験なんかでも、ずいぶん素直な問題ばかりになった。
しかし、高校での授業としては、やらなければならない分量は、以前と同じか、むしろ増えている。
例えば、もう大学入試から数Bは削除します、とか、関係副詞は出題しません、とか、そういうことになるのであれば、高校での負担は確かに減る。でも、そうはなっていないんだから、結局は以前と同じように、ひととおりのことは全てこなさなければならないし、それは入試問題のレベルを多少下げてもらったところで、そのひととおりのことをこなすのにかかる時間は何も変わらないわけだ。
さらに今の高校1年生は、関係代名詞すら知らずに入学してくる。そんなところから、イチから教えて、しかも土日は休ませながら、3年間で大学入試レベルまでを完成させなければならない。
つまり、以前より1割以上少なくなった時間数の中で、以前よりも多くの学習内容を消化しなければならなくなっているということ。ちなみに、土曜課外では、正規の授業を行ってはいけないので、演習程度にしか使えない。


それだけではない。
大学入試は、こうした実情とは裏腹に、大学生の学力低下を理由にして、どんどん受験生へのノルマを増やしている。
昨年度入試からは、国公立大のセンター試験は、5教科7科目が標準となった(それまでは、5教科6科目が標準)。つまり、文系は社会を2つ(それまでは1つでよかった)、理系は理科を2つ受験していることが標準的な前提になっている。
さらにさらに、来年度入試からは、英語のリスニングが導入される。
受験科目が1つないし2つ増えるということが、受験生にとっていかに負担増になるかは、容易に想像していただけると思う。


(ついでに言うと、こういう窮屈な中でやってるので、もはや高校では、受験に関係のない「余分な」授業をやっている余裕は、まるでない。
結果、必履修科目以外の、受験に必要のない科目は、どんどん選択制にして、受講しなくてもいいようになってきている。
文系の生徒が「物理」をやらずにすむのはもちろん、「日本史」や「地理」を全く履修せずに卒業するケースも普通になっている。同様に、理系なのに「物理」や「生物」の履修がゼロという生徒も普通にいる。
それを問題視して、例えば入試に理科3科目を課す医学部とかが増えたけれども、今のカリキュラムで理科3科目を履修させるのはまず無理だ。そんな時間がどこにある?
日本史をまるで知らない大学生、地理を習ったことのない大学生、物理の問題が解けないだけでなく、物理とはどんな学問かも知らない大学生……というのは、もはや当たり前の話なんです。)


もう一度まとめます。
授業時間は、1割以上減った。
中学校までのカリキュラムが薄くなった分、そのツケが高校にまわされた。
大学の入試科目は増えた。


その結果、進学校では、月〜金の過ごし方が、異様に濃密になってきている。
とてもちんたらやってる暇はない。課題、補習の連発で、生徒に要求する勉強量も当然増やさざるを得ない。
ゆとりどころの騒ぎではない。もうほんとに、ゆとり、ない。


さらに、授業日数が激減してるのに、こなさなければならないノルマは増えてる上に、週あたりのコマ数が1割以上減っている。
すると、どうなるか。
各教科間で、授業の奪い合いが始まる。
週あたり34時間で組んでいたカリキュラムを、週30時間に縮小する際、その減る分の4時間は、どこを減らすのか。その問題で、各教科間が戦争状態になった学校も少なくないはずだ。
ただでさえ授業数が減ってるのに、単位数まで減らされてはたまったものではない。おまけに、単位数が減れば、教員の定数も減らされる。影響は甚大だ。
正規の授業時間だけでなく、放課後も補習や課外などで奪い合いになる。
時間の取り合いとゆとりの喪失で、週休2日制実施以降、急に職場がギスギスし始めたという声もよく聞く。


苦肉の策として、65分×5限授業や、45分×7限授業などを始めた学校も多い。
50分×6=300分
65分×5=325分
45分×7=315分
という具合に、1日あたり15〜25分多く授業時間を確保できるからである。
逆に言うと、そんなみみっちいことしなきゃならんくらい、追いつめられているのだ。
単純に、いわゆるゼロ時限や7時限をエクストラとして付け足した学校もあるが、これは公立高校ではなかなか難しい面も多い(部活動の時間の確保や登校時間の問題等で)し、何より、教員・生徒双方にとって負担があまりに大きい。
あとは、2期制を導入する学校が増えた。前後期制にすれば、3学期制よりも、中間・期末テストを1回ずつ減らすことができ、授業時間の確保につながるからだ。
また、修学旅行や遠足、体育祭、スポーツ大会等の学校行事も、縮小や廃止の方向に進むパターンが多い。
実に「ゆとり」がない。


そうやって苦労に苦労を重ねて週休2日制に対応し、すっかり「ゆとり」を奪われているにもかかわらず、更なる仕打ちが学校を襲う。
「総合的な学習の時間」、そして「情報」だ。
これ、いずれも昨年度から始まった新カリキュラムの、「必履修科目」なんです。


もう今日は眠いので、つづきは今度にします。