キンキンのビール


今日はビールを冷やしておくのを忘れてた。
夏場だとこれは決定的なミスであって、冷蔵庫の製氷室にたまった氷の上でゴロゴロ転がして応急的に冷やしたり、近くの自販機まで走って冷えたやつを買ったりしなければならないけれども、もうこれくらいの気温になってくると、大した問題にはならない。冷凍庫に5分か10分入れておけば、すぐ飲み頃になる。もっと季節が進めば、冷蔵庫に入れる必要もなくなる。廊下の隅の寒いところに置いておけば、それがちょうど飲み頃の温度である。
「キンキンに冷えた」という表現がよくあるけれども、ぼくは「キンキンに冷えた」ビールが好きではない。どうやってんのか知らないけど、生ビールを、白く凍りついたようなジョッキに入れて出す飲み屋がよくある。あれがちっとも嬉しくないどころか、迷惑だ。乾杯で一口だけ飲んだら、ちょっと生ぬるくなるまで置いておきたくなる。
昔から腸が弱くて、冷たいものを飲み過ぎるとすぐ腹を下す、ということも関係しているかもしれない。あまりに冷えた飲み物には、習慣的に警戒心がはたらく。しかし、それ以前に、冷えすぎたビールは美味しくないと思う。実のところ、普通に家の冷蔵庫で冷やしておいたビールでもちょっとぼくにはやや冷えすぎで、毎日、実際に飲むより少し早めに外に出しておくようにしている。多少生ぬるくなりかけた頃合いの方が、味がいいように思う。


かなりの猫舌で、熱いものも苦手だ。と言うか、どんなものでも、あまり熱すぎては味がわからないと思うんだけど、どうなんだろうか。
家人に最初に気味悪がられたのは、カレーライスと味噌汁だった。ほかほかのご飯に熱いカレーをかけたりしたものは、しばらく冷ましておかないと食べない。理想は、冷や飯に温かいカレーをかけるのが美味しい。それでも、ついさっきまでぐつぐつ煮立っていたようなカレーはやはり少し冷ます必要がある。ふーふー言いながら食わなきゃならないようなカレーは、味がわからないと思うんだけど、それはぼくだけなんだろうか。
味噌汁も同様で、いつも早めにお椀に注いでおいて冷ましておく。ご飯はやはり冷や飯に限る。特に豚汁が好物なのだけれども、豚汁には唐辛子をたくさん入れるので、なおさら熱くては困る。ご飯は、まだビールを飲んでいる段階から注いでおいて完全に冷や飯にし、豚汁本体もぬるくなってから食べる。熱い豚汁など、何の意味もないように思われる。もうどう考えてもそうなんだけれども、そういうことを言うとたいていは気味悪がられるので、他の人はそうではないのかと不思議でならない。
と言うか、そもそも白米そのものが、ほかほかの熱ーい炊きたてっていうのはどうも感心しない。もちろん、いくら丼にする、とか、明太子をのせて食べる、とか、情況によってはほっかほかでなければ困るケースはたくさんある。しかし、概してごはんは冷え気味が美味しいと思う。だって、弁当のごはんって美味しいじゃないですか。これに関しては、美味しんぼの山岡が同じようなことを言っていて、我が意を得たりという気分になったことがある。また、それ以来自信がついて、人にも「ごはんは冷や飯のが美味いんだ」と堂々と言うようになった。


今日は、冷やし忘れていたビールを、冷凍庫に5分ほど入れておいてから飲んだ。ちょうどうまい具合の温度になって、いつもより美味しく感じた。あまり冷えてないビールは、泡がたくさん立つ。ビールは泡のたくさん立ったのが美味しいので、それも都合がいいと思っている。
……こうやって書くと、(奇妙ながらも)飲み物や食い物にものすごくこだわっているように思われるかもしれないけれども、実際は全くそんなことありません。うちはスパゲティと秋刀魚が同時に食卓に上ったりするし、どうせ2歳の娘のぐちゃぐちゃになった食べ残しで酒を飲んだりするんだから、こだわりもへったくれもないんです。